第 13 回 多重化

本日の内容


このドキュメントは http://edu.net.c.dendai.ac.jp/ 上で公開されています。

13-1. アイスブレイク

本日の属性

トランシーバーを使ったことがある 遊園地でアトラクションを効率よく回る作戦を考えたことがある
学籍番号 氏名 (番号欄)
司会者をしたことがある カクテルパーティー効果とは何か知っている

13-2. レポート課題

ワーク13-1

以下の問題について、グループで解決方法を3種類以上見つけ、解決方法を レポートにまとめて提出しなさい。 また、長所、短所、通信効率などについても議論しなさい。

問題

島にいくつかの集落があり、互いに無線ですべての集落に放送ができるとす る。 但し、すべて同一の周波数なので、混信すると混信したことは分かるが、放 送の内容や、どの集落からの放送なのかはわからないとする。 この時、どのような通信手法を取ると、相互に必要な事項を伝達できるか考え なさい。

  1. まず、個人で考え、付箋紙などに手法を考えて記入する
  2. グループで順番に一つずつ手法を提案していく
  3. 実際にシミューレーションを行ったり、長所、短所、通信効率などにつ いて議論する

締切、提出方法

12/18 火曜日の夕方までに <sakamoto@c.dendai.ac.jp>宛に グループで一通のレポートを作成し、 メールすること。

13-3. 講義

多重化

通信媒体には、光ファイバーや同軸ケーブルのように対向で一対一の通信を 行うものと、無線通信における空中のように多くの局が共有する マルチアクセス(MA)があります。 マルチアクセスでは混信が発生しますので、何らかの通信方式を定めなけれ ばなりません。

以下、複数の信号源が一つの媒体を使用することを前提とし、すべての信号 源が情報を伝達できるような方式を考えます。

周波数分割多重

光、電波、音声などを受信した際に、周波数ごとに信号を取り出すことがで きます。 そのため、異なるベースバンドで変調することで、同一媒体を共有すること ができます。 これを 周波数分割多重(Frequency-division Modulation) と言います。 放送局が異なる周波数で放送を行っているのがこれに当たります。 また、それぞれの周波数帯をチャンネルと呼びます。 この方式はアナログ通信でも使用できます。

この方式はチャンネルの確保が技術的な問題となりますが、それさえできれ ば、すべての信号源が任意のタイミングで自由に送信でき、送信効率も100% になります。

時分割多重

複数の信号源を時間をずらして送信する方式を 時分割多重(Time-division Modulation) と呼びます。 k個の信号源で 公平に分割すると、送信効率が1/kになります。 また送受信の多重化の際に同期が必要になります。 ただ、それ以上の複雑度はありません。

トークンリング

仮想の送信権を考えます。 これをトークンと呼びます。 そして、それを通信媒体そのものを使って、相互に公平に回し、トークンが 得られた時だけ、送信を行います。 トークンは特別な符号列や「次は〇〇さんどうぞ」など他の信号と区別がで きれば良いです。

この方式は、送信したいときにいつでも送信できるわけではありません。 k個の信号源での 平均効率は、通信路が空いているときは100%送信でき、また混んでいるときは 1/kになります。 但し、待ち時間の上限を定めるには、一回に送信できる長さを定めておかな ければなりません。 また、トークンを公平に回すルールは、通常は「次の信号源」とすれば良い ですが、 信号源が故障したり、雑音などによりトークンが消失してしまった場合など、 トークンを確実に1つだけ維持し続けるためのルールはかなり複雑になりま す。

CSMA

Carrier Sence Multi Access は信号源自体が搬送波(Carrier)を検知し、他 の通信が行われている間は通信せず、他の通信が行われてい無い場合は任意 のタイミングで送信できる方式です。

ハワイ大学の ALOHAネットワークでは大型コンピュータの端末だけがこの方 式をとり、大型コンピュータ側は別のチャンネルを使用して受信確認 (Acknowledgement)を返していました。

最大通信時間を T とし、k個の信号源がそれぞれに独立に送信を行うとしま す。 その時、単位時間 t内に平均 λ 個のパケットが発生すると仮定する と、t時間内にパケットが k 個発生する確率はポアソン分布から次の式で得 られます。

P t k = λ t k k ! e - λ t

P λ T 1 は最大通信時間 λ T について、その間に 1 個だけパ ケットが発生す るとすると、1個のパケットが生じてから、それ以降のパケットが生じない ということを意味します。 したがって、これは、一つのパケットが生じて通信が成功する確率にはなっ ていません。 P 2 λ T 1 とすると、一個のパケットが直前、直後両方のパケットとも混信せ ずに通信が成功することになります。 つまりこれが平均最大チャンネル効率になります。

x=λ T とすると、平均最大チャンネル効率は x e - 2 x となり、これの最大値は 1 / 2e = 0.18... となります。

この方式は、特別な取り決めはなく、単純なルールですが、チャンネル効率 は18%と低くなります。

CSMA/CD

CSMAでは混信が発生していても送信し続け、混信中は通信媒体は情報を伝えて いません。 そのため、混信を検知(Collision Detection)し、通信を取りやめると効率が 上がります。 現在主流となっているEthernet はこのCSMA/CD方式を規格化(IEEE802.3)した ものです。

混信を検知するには、自分が送信をしてから他の信号源が送信をしたかを確 認する必要があります。 ネットワーク全体に自分の信号が行き渡った後は、送信されないことが保証 されますから、ネットワーク全体に信号が行き渡る時間の上限を定める必要 があります。 そのため、最大ネットワーク長を定める必要があります。 一方、送信側として、複数の信号を送った後で、いくつか前の信号の混信が 分かるような状況が生じると制御が複雑になります。 したがって、混信信号を受信するまでの間は送信し続けるようにすると必ず 送信と混信を対応付けることができて便利です。 そのため、混信信号がやってくる最も遅い時間までは送信が続くように、最 小パケットサイズを定めます。

CSMA/CA

無線ネットワークでは、状況により電波が遠くまで届くことがあるので、最 長ネットワークサイズを厳密に定めることができません。 また、隠れ局、露出局問題という、通信しあっている2つの局に対して、第 三の局が送信局のみ、受信局のみの電波だけを検知できるような状況だと、 正常な通信を阻害する恐れがあります。 このため、無線ネットワークでは、送信者と受信者が信号を送受する前後で RTS(送信リクエスト)/CTS(送信可)、Acknowledgement などの特別な符 号を送り、第三の局が自分の電波の検知できる範囲内で通信が行われている かいないかを検知できるようにしています。 Wi-Fiなど無線ネットワークで使用されている方式です。


坂本直志 <sakamoto@c.dendai.ac.jp>
東京電機大学工学部情報通信工学科