第 7 回 IP

本日の内容


このドキュメントは http://edu.net.c.dendai.ac.jp/ 上で公開されています。

7-1. アイスブレイク

本日の属性

二進数の計算ができる ノートをとるときに図を大切にする
学籍番号 氏名 (番号欄)
外国で働いてみたいと思う 部長、委員長、班長などをやったことがある

7-2. レポート課題

ワーク7-1

自分の持っているパソコンや携帯電話のOSとバージョン、IPアドレス、サブネットマスク、デフォ ルトゲートウェイ、ネームサーバのアドレスを調べる。

例7-1

OSとバージョン
ubuntu 18.04
IPアドレス
133.20.160.42
サブネットマスク
255.255.255.0
デフォルトゲートウェイ
133.20.160.254
ネームサーバアドレス
133.20.160.42

ワーク7-2

グループでかぶらないように調整して、 一人次の4つずつ、通信会社、大学、外国企業、その他自由 (例えば、NTT、東京大学、マイクロソフト、JR東日本など)の ホー ムページに関して以下の項目を調べる。

名前
アドレス
IPアドレス
アドレスのクラス
ネットワークアドレス
ネットワークアドレス所有の組織名

例7-2

名前
東京電機大学
アドレス
https://www.dendai.ac.jp/
IPアドレス
133.20.16.173
アドレスのクラス
クラスB
ネットワークアドレス
133.20.0.0/16
ネットワークアドレス所有の組織名
東京電機大学 総合メディアセンター

締切、提出方法

グループでまとめて、 来週火曜日の夕方までに <sakamoto@c.dendai.ac.jp>宛にメールすること。

7-3. 講義

ネットワーク間接続と IP アドレス

インターネットは通信を中継する仕組みです。 これは、最大長が定められたデータを宛先などを含むヘッダを付加して送る、 パケット通信 というデータ構造に基づきます。 そして、インターネットに接続されたホストには世界で唯一のアドレス (IPアドレス)が割り当てられ、そのアドレスに基づいて転送先 が計算されます。 インターネットでは、複数のネットワークが相互に接続されています。 そのため、それぞれのネットワークそのものを識別するためにもアドレスが必 要になります。 つまり、複数のネットワークを接続したインターネットでの通信にはネットワー クアドレスとコンピュータ(ホスト)のアドレスが必要になります。

IP(インターネットプロトコル) version 4 ではネットワークアドレスとホス トアドレスの対を 32bit = 4 バイトで表現します。各バイトを 0 から 255 までの 10 進数で表現し、ピリオドで区切って表します。つまり、インターネッ トのアドレスは 0.0.0.0 から 255.255.255.255 までになります。

このインターネットのアドレスのうち、一部がネットワークアドレスで、一部 がホストアドレスになります。 この区切りには複数あり、クラスと呼ばれています。

なお、ホストアドレスのうち、 0 はネットワーク全体を表します。 ホストアドレスが 0 の IP アドレスのことをネットワークアドレス と呼ぶことがあります。 一方、最大の値はネットワークに属しているホスト全体を表します。 つまり最大値宛のメッセージはホスト全部が受信する必要があります。 このアドレスのことをブロードキャストアドレスと呼ぶことがあ ります。

クラス A
0nnnnnnnhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh
クラス A
インターネットアドレスを二進数で表した時、最上位のビットが 0 のものを クラス A のアドレスといいます。つまり 0.0.0.0 から 127.255.255.255 ま でがクラス A になります。 クラス A では最上位のバイトがネットワークアドレスで、 2 バイト目から 4 バイト目までがホストアドレスになります。 ネットワークは 128 個、各ネットワークではそれぞれ 256×256×256 -2 個 のホストを接続することができます。 但し、ネットワークアドレス 127 は特別で、 127.0.0.1 が自分 自身を表すことになっています。
クラス B
10nnnnnnnnnnnnnnhhhhhhhhhhhhhhhh
クラス B
インターネットアドレスを二進数で表した時、最上位とその次のビットが 10 のものをクラス B のアドレスといいます。 つまり 128.0.0.0 から 191.255.255.255 ま でがクラス B になります。 クラス B では上位 2 バイトがネットワークアドレスで、 3 バイト目と 4 バイト目までがホストアドレスになります。 ネットワークは 64 × 256 個、各ネットワークではそれぞれ 256×256 -2 個 のホストを接続することができます。
クラス C
110nnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnhhhhhhhh
クラス C
インターネットアドレスを二進数で表した時、上位3ビットが 110 のものをクラス C のアドレスといいます。 つまり 192.0.0.0 から 223.255.255.255 ま でがクラス C になります。 クラス C では上位 3 バイトがネットワークアドレスで、 4 バイト目がホス トアドレスになります。 ネットワークは 32 × 256 × 256 個、各ネットワークではそれぞれ 256 -2 個 のホストを接続することができます。
クラス D
1110cccccccccccccccccccccccccccc
クラス D
インターネットアドレスを二進数で表した時、上位4ビットが 1110 のものをクラス D のアドレスといいます。 つまり 224.0.0.0 から 239.255.255.255 ま でがクラス D になります。 クラス D は一対一通信には使いませんので、ネットワークアドレスやホスト アドレスを表すものではありません。 これは、広域通信(マルチキャスト)を行う時のチャネル番号を表しています。 チャネル数は 16 × 256 × 256 × 256 個あります。
クラス E
1111xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx
クラス E
残りの部分。つまり、インターネットアドレスを二進数で表した時、上位4ビッ トが 1111 のものをクラス E のアドレスといいます。 つまり 240.0.0.0 から 255.255.255.255 までがクラス E になります。 クラス E は未使用領域として予約されています。 但し、 255.255.255.255 は自分と同じネットワークに属するホス ト全体のアドレスとして使います。 なお、2007 年、クラス E をプライベートなユニキャストアドレスとして使お うという提案がされました。

まとめ

0.0.0.0
インターネット全体
255.255.255.255
同一ネットワーク上のホスト全体
133.20.0.0
東京電機大学工学部のネットワークアドレス。クラス B
133.20.255.255
東京電機大学工学部のホスト全体
192.0.2.0/24, 198.51.100.0/24, 203.0.113.0/24
出版用アドレス TEST-NET-1,2,3 example.com のアドレス例示などに用いる

IP アドレス(ネットワークアドレス)の管理

グローバルアドレス

インターネットに接続しているホストの IP アドレスは全世界で必ず単一のも のであることを保証しなければなりません。 そのため、世界規模になったインターネットのアドレス管理は国際機関で行う 必要があります。 ICANN(Internet Corporation For Assigned Names and Numbers http://www.icann.org/) は、世界的なア ドレス管理を行うための中央組織です。 各地域から理事を選出して、非営利団体として運営しています。 なお、国際機関が発足する前はアメリカ政府が IANA(Internet Assigned Number Authority http://www.iana.org/) と いう組織を運営していました。 移管が済んだ現在、 IANA という名前は ICANN の資源管理、調整機能の名称 として残っています。

ICANN は世界を 5 つの地域に分け、アメリカは ARIN(American Registry for Internet Numbers) が、 ヨーロッパとその周辺地域は RIPE-NCC ( Réseaux IP Européens Network Coordination Centre http://www.ripe.net/)が、 アジアと太平洋地域は APNIC(Asia Pacific Network Information Centre http://www.apnic.org/)が 、 中南米地域は LACNIC (http://lacnic.net/)が、 アフリカ地域は AfriNIC(http://www.afrinic.net/が管轄しています。 そして、 APNIC の下位組織として日本を管轄するのが JPNIC(Japan Network Information Center http://www.nic.ad.jp/) という組織です。 日本の組織は JPNIC に IP アドレスを割り当ててもらいます。

これらの国際機関は IP アドレスの管理の他、ドメインネームサービスの管理 も行っています。 これは、通常、インターネットのアドレスとして使われる dendai.ac.jp のよ うな名前と 133.20.0.0 というような IP アドレスを結びつけるサービスです。

プライベートアドレス

インターネットの実験や内部 LAN で閉じたサービスなど、グローバルネット ワークに接続しないネットワークでは、 ICANN などのネットワーク組織から 交付されたネットワークアドレスではなく、特定のアドレスを使うことが許さ れています。 これをプライベートアドレスといいます。 プライベートアドレスは次の三種類があります。

クラスアドレス個数
クラスA10.0.0.0/255.0.0.010.0.0.0/255.0.0.01個
クラス B172.16.0.0/255.240.0.0172.16.0.0/255.255.0.0 〜 172.31.0.0/255.255.0.016個
クラス C192.168.0.0/255.255.0.0192.168.0.0/255.255.255.0 〜 192.168.255.0/255.255.255.0256個

家庭用のブロードバンドルータなどはルーティングが必要ないので 192.168.x.0/255.255.255.0 が使われることが多いです。 一方プロバイダ内などでグローバルアドレスを節約するために使われるのは 10.0.0.0/255.0.0.0 です。

サブネット

IP アドレスのネットワークアドレスは通常一組織には一つしか割り当てられ ません。ですから、何の工夫もしないと一つの組織には一つしかネットワーク を持つことができません。 しかし、現在使用されている Ethernet などの LAN では一つのネットワーク に接続しているコンピュータは高々 50〜100 台程度に抑えるとパフォーマン スが良くなると言われてます。 したがって、組織内に一つしかネットワークが存在できなければ、コンピュー タ授業もろくにできません。

133201601
10nnnnnnnnnnnnnnsssssssshhhhhhhh
11111111111111111111111100000000
サブネット
そこで IP アドレスのホストアドレスの部分を一部内部ネットワークのアドレ スとして、組織内部で IP アドレスの解釈を変えて運用することが行われてい ます。 この内部ネットワークのことを サブネットと言います。 つまり、 IP アドレスの解釈を従来の「ネットワークアドレス」と「ホストア ドレス」の二つに分けていたのを、新たに組織内部だけ「ネットワークアドレ ス」と「サブネットアドレス」と「ホストアドレス」の三つに分けることにし ます。 組織において、ネットワークアドレスは既に決まってますから、問題になるの はサブネットアドレスとホストアドレスの分けかたです。 これについては組織で自由に決めます。 つまり、 IP アドレスのどこがサブネットアドレスか、ホストアドレスかを指 定する必要があります。 そのため、 IP アドレスをビット毎に分割します。 ネットワークアドレスとサブネットアドレスを表す位置のビットを 1, ホスト アドレスを表す位置のビットを 0 とした 32 bit の列を サブネットマ スクと言います。 例えば東京電機大学の工学部は 133.20.0.0 というネットワークアドレスを持っ ています。 そして、例えば、各学科では 3 バイト目がサブネットのアドレスになり、 4 バイト目がホストのアドレスになっています。 この時、サブネットマスクは 11111111.11111111.11111111.00000000 = 255.255.255.0 となります。 例えば情報通信工学科のサブネット番号は 160 です。そこの 1 番のホストの IP アドレスは 133.20.160.1 となります。 なお、情報通信工学科のネットワークアドレスは 133.20.160.0 となりますが、 これではどこがサブネットのアドレスなのか分かりません。 そこで、サブネットの場所を明記するため、 133.20.160.0/255.255.255.0 や と表記します。 なお、厳密にはサブネットを表すビット列は連続している必要はありませんが、 通常連続させます。この場合、連続しているビット数 24 で 255.255.255.0 を表現できます。そのため、133.20.160.0/24 と表記することもあります。

アドレスの確認法

Windows パソコンで使用しているIPアドレスを知るには、PowerShell また はコマンドプロンプトで、 ipconfig コマンドを使用します。 なお、このコマンドの表示は抑制されているので、全ての情報を表示させるには ipconfig /all と打ちます。

Macintosh パソコンではターミナルで ifconfig コマンドで調 べることが出来ます。

スマホ、タブレットなどでは、設定項目の中のネットワークの項目を調べる とわかります。

ネームサービスとドメイン名

DNS(Domain Name System) は IP アドレスを名前で読み替えるものです。 名前は階層化されており、各組織が階層管理するようになっています。

階層構造

インターネットのアドレスの名前は階層的に管理されています。 ここで言うアドレスとは、例えば www.c.dendai.ac.jp というような名前のこ とです。 名前はピリオドで区切られ、区切り毎に管理されます。 また、 右に行くほど管理規模が大きくなります。

C 科メディアセンターJPNICJPNIC ICANN(IANA)
wwwcdendaiacjp

ネームサーバの仕組み

ネームサーバは特定の組織に属する名前とその IP アドレスを保管していて、問い合 わせが来ると名前やIPアドレスを返します。 但し、他のネームサーバとも連係しており、自分のサーバ内にないデータは積 極的に他のサーバに問い合わせます。

他のネームサーバとの連係方法ですが、ルートサーバというもの が世界中に 13 台あり、そのアドレスリストが各ネームサーバに置かれていま す。 そしてこのルートサーバがアドレスの検索の起点になります。 例えば、 www.c.dendai.ac.jp というアドレスを解釈できないネームサーバは 次のような動作をします。

  1. まずルートサーバに尋ねます。するとルートサーバは jp を管理している ネームサーバのアドレスを返して来ます。
  2. jp を管理しているネームサーバに問い合わせると、 dendai.ac.jp を管 理している電大メディアセンターの管理しているネームサーバのアドレスを返 します。
  3. 電大メディアセンターのネームサーバに問い合わせると、 C 科のネーム サーバのアドレスを返して来ます。
  4. C 科のネームサーバでは www.c.dendai.ac.jp のアドレスを管理してます ので、問い合わせに対して IP アドレスを返すことができます。

このようにすべての問い合わせはルートサーバから始まることになっているの で、ルートサーバが全滅したらインターネットの利用は大混乱になります。 そこで、ルートサーバは複数台あり、世界中に分散して管理されています。 なお、ネームサーバのデータには有効期限があり、一度問い合わせたデータは 有効期限内はキャッシュされます。

IPアドレスの調べ方

ホスト名のIPアドレスをパソコンで調べるには、nslookupコマンドを使用 します。

例7-3
$ nslookup www.dendai.ac.jp
Server:		133.20.160.80
Address:	133.20.160.80#53

Non-authoritative answer:
Name:	www.dendai.ac.jp
Address: 133.20.16.174

WHOISデータサービス

インターネットのネットワークアドレスは、世界的に調整、管理されていま す。 特に、WHOISデータサービスという管理者のデータベースが構築 されています。

Macintosh や Linux などの UNIX 系のOSならwhoisコマンドで、 ドメイン名、ネットワークアドレスとも検索できます。

Windows やタブレット、スマホでは、ブラウザから検索してください。

なお、データベースが悪用される可能性があるため、自組織で保管している データしか検索できないサービスもあります。 このデータベースはインターネットの管理運用のためだけに使用するもので すので、くれぐれも悪用しないようにしてください。


坂本直志 <sakamoto@c.dendai.ac.jp>
東京電機大学工学部情報通信工学科